7/27(金)15時より、青学Hiconで行われる「第1回JAPAフォーラム 〜地方創生の課題〜」にパネルとして参加させていただくことになりました。青山学院Hicon主幹研究員・トミタプロデュース株式会社の富田です。

自分の頭の整理も含めて、普段考えていることを少しだけこのHiconブログに書いておきます。

プロデュースとは何か? いったいどんな仕事なのか?

私は、日常的に仕事で地方・地域の「創生」というか、その個性を活かして未来を良くしていく・・・ということに関わっています。自治体のご相談もありますし、商店街や商業施設といった「街」もあります。「まちづくり団体」ということもあります。
また、環境省が運営するEPOという中間支援組織(NPOや民間企業などの取組みの支援をする組織)のアドバイザーをしている関係で、環境系を中心にNPOの皆さんとお話する機会もよくあります。

こうした皆さんと話をするとき、私が長年いたコンテンツプロデュースの世界の考え方は、つくづく特殊なものだったのだなぁと感じます。しかし一方で、その考え方こそが「地方創生」には非常に必要だとも感じるのです。

 

ところで、「プロデュース」という言葉はいま非常に多岐にわたって曖昧に使われていますが、本来はプロデュースとはどういう仕事でしょうか? プロデューサーとは単に役職が上になった放送局の人ではありません。

物事に惹かれるのには「合理的な理由」と「そうでない理由」とがあります。ここで、後者の理由を「感性的なこと」と取って、たとえばデザインとかBGMとかキャッチコピーのかっこよさだとか・・・と分類することが、普通のマーケッターや広告会社の人などには多いでしょう。しかし、私が注目するのはそこではありません。そのあたりの「感性的な魅力」は、売り手が商品をより売れるようにと「合理的に考えて付加した理由」であって、私に言わせれば、前者の「合理的な理由」とさほど変わりません。

では、他に何があるのか? それは、売り手(情報の発信者)が、受け手にウケるかどうかに関係なく自分の好き嫌いを付加する場合に出てきます。

 

ジャズが流れる焼き鳥屋で例えるなら・・・

例えば、小ぎれいな焼き鳥屋でオシャレなBGMとしてジャズがかかっている…という場合、店主がジャズ好きというよりも、店にオシャレな「雰囲気」をなんとなく出したいと思っていることがほとんどでしょう。「いや、うちは専門家に選ばせている!」なんて店があったとしても、客がリラックスできる空間づくりのためなら同じことです。

ところが、焼き鳥以上にジャズが好きなオーナーが、JBLのスピーカーと真空管アンプで好きなレコードを大音量で聴かせる焼き鳥屋があったらどうでしょう。焼き鳥を焼きながら時々レコードプレイヤーの上のアナログ盤もくるっとひっくり返して「いいね〜!」と悦に入っているオーナー・・・それはもはや客のための雰囲気作りとはまったく違います。
「オヤジ、うるさいからちょっと音楽のボリューム下げてくんない?」なんていう客には、「悪いけど他で飲んでくれ」と平気でいうような、オーナーと趣味の合うジャズ好きならたまらない店だけど、単に焼き鳥食べに来た人には迷惑な店ですよね。

ここで、店のファンが付くのはどちらだと思いますか?
一概にはいえませんが、後者の常連客は焼き鳥の味とともにオーナーという人間の魅力に惹かれて来ていることは確かでしょう。

 

私は、前者の合理的な理由を感性的なことも含めて「Function」といいます。後者は発信者側の「Message」です。

一般的なマーケティングでは、客のベネフィットにとにかく寄り添うことが基本ですから、発信者の好き嫌いを客に表現する「Message」などビジネスには邪魔なものかもしれません。しかし「メディア」の論理「コンテンツ」のプロデュースには欠かせない、最重要なものなのです。

発信者(制作者・表現者・開発者)の主観・価値観・好き嫌いが感じられないものは、音楽でも映画でも小説でも・・・多くの人の気持を揺さぶることはできません。もちろん、「Function」の要素はしっかりと受け手を満足させるレベルである必要があります。焼き鳥屋でいえば、味や値段ですね。そこに、送り手の「自分はこういう人間だ」「こういうことが好きだ」「こういうのは嫌いだ」という情報が加わって初めて人はその「送り手のファン」になります。

Function(理)とMessage(想)、このバランスが上手に取れている状態を「理想」というのです。

「Function」だけで勝負すると他にもっと条件がいいところや目新しいところができれば客は移っていきます。焼き鳥屋の例なら、さらに安くて美味しいところが駅にも近かったら、BGMはジャズでもボサノバでもお客はすぐに流れていくことでしょう。ベネフィット至上主義を追求したら大資本には個人店はかないません。それを無理して目指そうとすると、消費者は「モンスター化」していきます。

話がだいぶそれたようですが、このFunction(理)とMessage(想)のバランスを取りながら、多くの人に好かれる何かを意図的に生み出す活動をする人をプロデューサーといいます。合理性を追求する「コンサルタント」や、感性的な部分も含めた市場のニーズ「ベネフィット」に応えることで結果を出す「マーケッター」とは似て非なる役割です。

 

自分の「好き」を大事に、創り、発信する人が増えること

政府が旗を振り、地方自治体担当者がにわか仕込みで競争原理を学んで<稼げる地方>を作ろう・・・とスタートした「地方創生」の設計の根本が、一般的なマーケティング理論が元になっているとしたら、しばらくして残念な結果が累々と積み上がらないか心配になります。

マーケティングというのは、市場に対しより効率的に情報を浸透させ、より効率的に選択率を高めてもらうための方法論であり、企画者には必須な知識ですし身につけるべきテクニックだと想います。ただし、マーケティングの考え方だけでは「地方創生」「地域創生」の担い手は不足です。

なんとなくオシャレなパッケージの特産品、古民家を活かしたオシャレなカフェ、どこでも同じゆるキャラ、マラソン大会、スタンプウォークラリーに婚活イベントなどなど、どこかと似たような形になっていたら要注意です。

 

「地方」という名の地方はありません。
考えるべきことの根本は同じですが、答えはみんな違って当たり前。しかし、オリジナルの答えに自信を持てるようになることは、もちろんそう簡単ではありません。日本人は特に、人と違っていないかを気にしますから。

そのためには、独自の「メディア」が必要だと私は考えます。
地方の人が自ら、メディアの送り手のノウハウをつけて自ら情報発信を適確に、かつMessageをたっぷりと込めてできるようになること。「文章」「コピー」「写真」「映像」「編集の魅力」・・・様々なメディアの手法を身に着け、自分たちの魅力を自分たちが発信していけること。インターネット時代がそれを可能にします。

さらにその前に、「企画」の方法論も必要でしょう。
それも、他と同じ成功に効率よくたどり着くための企画ではなく、いかに他と違うユニークな存在をアピールできるかの企画。つまりそれは「コンテンツ」としての企画です。食べ物だろうが、1泊2日の時間だろうが、何かの産品だろうが、「コンテンツ」として人を感動させるか、ファンが付くかどうかを徹底的に磨きあげること。ニッチなものでも、世界中にはたくさんの人がいて意外な人がファンになってくれたりします。Global時代ならではです。

 

それが果たして売れるのか? 儲かるのか?
その答えがはっきりと分かっていたら、映画会社も出版社も音楽会社も放送局も、苦労はしませんよね。
経済益の目標値をクリアできるかどうかは、もちろん最大限の努力はしますが、常にやってみないと分からないのです。

しかし、一つだけ確実にいえることがあります。

「コンテンツとして何かを作る仕事は、している人が(非常に大変だけど)非常に楽しい・嬉しい」ということです。自分たちの生み出した「コンテンツ(商品、サービス)」を、メディアを作って情報発信することも同様です。

情報発信の中心にはワクワクとしたエネルギーが集まってきて、そこにさらに人も情報も集まってきます。

その「楽しさ」こそが、経済益とは別に得られた「益」であると思います。この「自ら何か楽しいものを生めた喜び」という<益>は、地方が衰退していく中でどんどん無くなっていったものではないでしょうか。

 

富田は、人間が仕事を通じて得るべき益には本来3つのものがある。「経済益」「評価益」「満足益」である・・・という「報酬三分説」を唱えていますが、長くなるのでここでは割愛します。

「地域創生」を「経済益」の向上という側面だけで考えると非常に無理がありますが、上記の3つの益を意識できればバランスが取れるところがあるのではないだろうかと私は考えています。そしてその状態を目指すために、地方は東京・首都圏よりもとても有利な状況であるとさえ思います。

そのあたり、詳しくは7月27日のフォーラムでお話しできればと思います。

報告書ではなく、共に汗をかく地域創生を|青山学院Hicon

「地方創生」「地域創生」の結果は、地域によって千差万別となるはずです。
しかし、考え方の多くは共通しているでしょう。

それは、他とは違う「ユニークな何か」を生み出すことによって、合理的理由というよりもその地域をただ好きな人を一人ひとり増やしていくことです。そして持続には、「ユニークな何か」が生み出せる人材<プロデュース型人材>を地域に育てることが大切です。簡単ではないかもしれませんが、よかったら私達と一緒に始めてみませんか。

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