53 Next Retail Labフォーラム

第1回DX大賞受賞 九州のホームセンターグッデイ

「現場主導のデータ騒動経営が成功をもたらす」

20221117日(木) 1900-2100

青山学院大学 経営学部 マーケティング学科

近藤 暖夏

 

今回参加させて頂いたのは、株式会社グッデイの代表取締役社長である柳瀬隆志氏によるご講演です。

ご講演は以下のような内容でした。

 

 

  • 株式会社グッデイについて

株式会社グッデイは創業1978年、北部九州を中心に64店舗のホームセンターを展開する年商約360憶円の会社です。

  • 日本DX大賞 大規模法人部門 大賞受賞について(動画)

GooDayX-地方企業が挑んだ人のDX-

  • 入社時の課題

柳瀬氏が入社して当初の株式会社グッデイは

IT人材不足

・投資余力不足

・既存の仕組みを変えられない企業風土

という複数の課題を抱えていました。

既存社員の方々のIT活用の方向性がつかめていないことによって、

・「クラウド」や「ビッグデータ」に興味はあるものの、どのように使えば業績アップにつながるかわからない

・外部にシステム開発の依頼をせずにシステムの内製化をしたいが、システムに関する人材やスキルが不足している

・データに基づいて考えるバイヤー・店長等もおらず新システムを作っても使わない懸念がある

という状況の中で、経営的な判断が現場に反映されず、マネジメントが十分にできない状態に陥っていました。

  • 何からDXに取り組むべきか

DX」という言葉は使われる幅が広く様々なアプローチ方法が存在する中で、柳瀬氏は「企業の保有するデータを分析し、活用することで、業績アップに貢献することが望ましい」と考えられ、株式会社グッデイの場合は「データ分析」を切り口としてDXの取り組みを2015年から開始していきました。

柳瀬氏が目指した会社の姿は、「データドリブン経営×現場主義」になります。なぜこの姿を目指すのかという理由として、データドリブンな意思決定を浸透させることで企業の業績が上がり結果として社員の方のモチベーションのアップにつながっていることが根拠になっていると述べられていました。

  • データドリブン経営×現場主義のポイント

データドリブン経営×現場主義を実現させるためには、「データの活用・分析」と「現場の経験と勘」を組み合わせることが重要です。また「仮説」・検証プロセスを回す」として、データと統計を組み合わせて分析を行い、新たな視点での改善策を提示し、仮説を構築します。その後現場へのKPIに落とし込み、ダッシュボードで進歩管理を行います。

  • DX推進を行う上での課題

まず自社システムの把握は難しいという課題点があります。また基幹システムの変更や入れ替えは、難易度・影響度が共に高く現場からの反感も買いやすくなってしまいます。システムを連携させようとしても改修コストが高くなってしまいます。

そのため柳瀬氏は、システム同士を連携させるのではなく各システムのデータをクラウドDHWで一元管理するといった、データ分析基盤の構築から着手していきました。またデータ分析を通じてBQ内のデータについての理解が進んだことにより、業務システムの理解も進み、基幹システムのウェブアプリ化も内製で実装することに成功しました。

  • システム利用環境の変化

従来は固定PCでしかシステムにアクセスできなかったのですが、現在ではスマートフォン・タブレット・ノートPCから利用することが可能になったため、作業負荷の軽減に貢献しています。

  • できるようになったこと

DXによって何ができるようになったのかというと、

「自社のビッグデータが簡単・スピーディーに分析できるようになったため、業務効率がアップし業績向上策の精度も共にアップ」

「どのようなデータが保管されているのかわかるようになり、データの見える化、また自社システムの理解が深まる」

「データやクラウドなどに詳しい人材の採用・育成ができるようになり、システム内製化が実現し、データリテラシーが向上した」

ということが挙げられます。

  • 人材育成の重要性について

データ活用の環境やデジタルツールは以前に比べると格段に利用しやすくなり、中小企業でも気軽に導入できるものとなりましたが、一方で使いこなせるスキルや知識が無ければ折角の環境変化の恩恵が受けられないという問題も抱えています。そのため今後はデータ活用やツールを使いこなせる人材の育成が経営の重要課題となっています。

人材育成のために株式会社グッデイが行っているのが「人材育成プログラム“GooDay Data Academy”」という研修です。この研修の狙いは、「感覚」や「勘」で話をするのではなく、データの裏付けを持った議論ができる人材を育成することであると述べられていました。株式会社グッデイが今後もデータドリブン経営を実践するうえで社員の方のデータリテラシーの向上は必須であり、基本的な概念や用語が通じないとコミュニケーションが取れなくなってしまいます。単なる座学ではなく、小売業の現場で日々使っている話題やデータを題材とし実務に活かすことで、様々な効果が得られるようになります。

  • デジタルによる企業変革のポイント

企業変革の難しさは、組織にも「慣性の法則」が働くところにあります。変わりたくないという意識が社員の中あることで、改善の動きが止まってしまい改革が進まなくなってしまうため、止まっている人を動かすために「変革」というものを行います。

変革を起こすために必要なのは、

「時代の変化に対応し、新しいことに積極的に挑戦すること」

「経験や勘に頼らず、事実に基づいて状況分析し、自分達の進むべき方向性を示すこと」

「常に学び続け、最新の情報・データを元に、自分達のスキル・インフラをアップデートすること」であると仰られていました。

 

 

 

私自身就職活動をしていく中でよく「DX」という単語を耳にしてきましたが、その単語に対して「デジタル化を推進することによって組織が従来抱えていた課題を解決することができる」といったような漠然としたイメージを抱いていました。しかし今回の講演を通して、データ活用の環境やデジタルツールを整えたとしても、根本にある人的問題の解決にまで目を向けなければ本当の意味でのDX改革は成功しないのだということを知ることができました。株式会社グッデイ様は、様々な問題を抱えていた従来のシステムを最適なDXの視点から改善しただけではなく、そこで働く社員の方々の考え方をアップデートすることに成功されていました。DX化を推進していくためにシステムを改革するだけではなく、そこで働く人々の固定観念をも改革していかなければならないことが隠された課題であり、また更にシステムの恩恵を十分に享受できるような人材を育成していくことが、その先の企業の変革につながっていくのだと感じました。

講演参加に至り、講演者の柳瀬様、また運営関係者の各様に感謝申し上げ、報告レポートといたします。

“新しい時代の経営”を伴走します|青山Hicon

いま、時代が大きく変わる潮目にあります。
マスからネットへとメディアの主役が変わり、情報の流れが変わりました。AIやロボットは進化を続け、言語の壁や距離の遠さを越えてコミュニケーションができるようになりました。商品やサービスの企画、市場の設定、プロモーション戦略、何もかもがかつての経営論では太刀打ちできません。

この時代の経営者は、「グローバルな視点」と「文化」を軸にした戦略が必要と言えるでしょう。よろしければ私達と一緒に始めてみませんか。

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